伝えたつもり、聞いたつもり|(誤薬・服薬/20分)
本記事の趣旨
この記事では、服薬変更情報の共有不足と従来習慣の継続により、
低血糖を伴う誤薬が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】伝えたつもり、聞いたつもり(誤薬・服薬)
■利用者プロフィール
76歳 男性 要介護度:2 在宅(デイサービス利用) 独居
ADL: 屋内自立、屋外は杖使用。
認知機能: 軽度の物忘れあり。理解力は保たれている。
性格: 口数は少ないが、他者との交流は楽しみにしている。几帳面で、自分のやり方を変えるのが苦手。
生活歴: 元会社員。自己管理を大切にしてきた。
既往歴: 糖尿病、高血圧
服薬情報: 朝・昼・夕の内服あり。本人が自己管理している。
現在の生活: 「健康のために」と自宅では毎朝体操をしている。デイサービスも楽しみにしており、体操やレクにも積極的に参加する。食後はいつも職員に「薬あるかね?」と声をかけて服用している。
直近の変化: 1週間前、かかりつけ医の指示で昼に飲んでいた糖尿病薬が中止となり、朝夕のみの処方へ変更となった。本人は「薬が減って楽になった」とデイサービス職員に話していた。
■状況
デイサービスにて、午後のレク中にぐったりとする様子が見られた。
受診の結果、低血糖症状を起こしているとの診断を受ける。
さらに、医師と本人との問答により不要になっていた糖尿病薬を飲み続けていたことが判明した。
一週間前の受診後、本人は連絡帳に「昼の薬がなくなりました」と記していたが、中止になった薬も持参していた。
職員への聞き取りから、職員は薬の変更後も昼食後に「お薬飲みましたか?」と声をかけ、
本人が「忘れてたよ。持ってきてくれ」と話したため薬を手渡し、服用していたことが判明した。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 連絡帳の内容は共有されていましたか?
- 中止になった薬まで持参していた原因として、どんなことが考えられますか?
- 本人の「健康のために」という思いは、影響しそうですか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 職員が薬の変更内容を把握しないまま手渡した。
- 服薬内容の最終確認が行われていなかった。
■背景にある原因
- 薬の変更情報が連絡帳のみで共有され、十分に認識されていなかった。
- 「服薬は本人管理」という前提により、内容確認が省略されやすかった可能性がある。
- デイサービスという通所環境において、医療情報の更新がリアルタイムに共有されにくかった。
■対策
- 薬の変更時は、連絡帳だけでなく口頭や記録で確実に共有し、複数人で確認する仕組みを作る。
- 通所時に持参薬の内容を定期的に確認し、処方内容との整合性をチェックする。
- 「服薬しましたか?」ではなく、「どの薬を飲みますか?」と内容確認を含めた声かけにする。
- 本人にも薬の変更点を具体的に説明し、不要な薬の持参を中止するよう支援する。
見方のポイント
この事例は「確認不足」と捉えられやすいですが、
背景には情報共有の方法や業務の前提が影響していた可能性があります。
薬の変更自体は伝えられていたものの、それが実際の行動(服薬確認)に結びついていなかった点が重要です。
また、本人の「これまで通り行う」習慣と、職員の「本人管理」という認識が重なり、確認の機会がすり抜けたとも考えられます。
対策としては、「誰がどこまで確認するのか」を曖昧にせず、変更時に限ったチェック体制を設ける視点が有効と考えられます。



