渡しただけの薬|(誤薬・服薬/20分)
本記事の趣旨
この記事では、服薬自己判断と確認不徹底が重なり服薬管理不備が生じた事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】渡しただけの薬(誤薬・服薬)
■利用者プロフィール
82歳 男性 要介護度:2 施設入所中
ADL:日常生活はほぼ自立。食事・移動ともに問題なし。服薬は基本的に自分で行う。
認知機能:中等度の認知症あり。直前の出来事を忘れることがあり、行動の一貫性が保ちにくい。場面によって判断が変わる。
性格:マイペースで、自分のタイミングを優先する。人から急かされることを嫌う。
生活歴:自営業。自分の裁量で生活してきた期間が長い。
服薬情報:毎食後に内服あり。一包化薬。低血糖予防のため、食後すぐの服薬が望ましいと薬剤師に言われている。
環境:食後に職員が薬を手渡し、その場で服用を促す運用。
現在の生活リズム:食後すぐには飲まず、しばらくしてから自室で飲むことがある。
直近の変化:最近、薬をポケットやテーブルに置いたままにする場面が増えている。
■状況
昼食後、職員がAさんに薬を手渡した。
Aさんは「あとで飲む」と話し、その場では服用しなかった。
職員は他利用者の対応もあり、服薬を見届けずにその場を離れた。
その後、別の職員が同様に服薬確認を行った際、
テーブル上に残っていた薬を見て「まだ飲んでいない」と判断し、再度服薬を促した。
Aさんはその薬を服用したが、
その後、ポケットの中から同じ時間帯の薬が見つかった。
結果として、服薬のタイミングや量が適切に管理されていなかった可能性が生じた。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- このケースは誤薬と言えるのか、それとも別の問題と捉えるべきでしょうか?
- 「あとで飲む」という行動に対して、どのような対応が必要でしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 服薬確認不足
- 情報共有不足
■背景にある原因
- 薬を一時的に置く・しまう行動に対するリスク認識が十分に共有されていなかった。
- 職員間で「服薬済み/未服薬」の判断基準や確認方法が統一されていなかった。
■対策
- 服薬は原則その場で見届ける運用とし、難しい場合の代替手順(記録・引き継ぎ)を明確にする。
- 「あとで飲む」場合の対応方法(預かる・再訪時間を決める等)を統一する。
見方のポイント
この事例は、服薬忘れや重複といった結果だけでなく
「あとで飲む」という本人のペースと、現行の運用との間にズレがあった点が一つの視点となります。
また、認知機能の影響により行動の一貫性が保ちにくい中で、
複数職員の関わりが重なることで、判断のばらつきが生じた可能性も考えられます。
また、毎回必ずその場で服薬を完了させる対応は誤薬を防ぐことはできても、
本人の拒否や業務負担の増加につながる側面もあります。
一方で、記録や引き継ぎ方法の整理など、現実的に継続しやすい対応を積み重ねることで、リスク低減を図る視点も考えられます。


