確認しなくても分かる|(誤薬・服薬/20分)

本記事の趣旨

この記事では、慣れによる確認省略と安心感が重なり誤薬が発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】確認しなくても分かる(誤薬・服薬)

■利用者プロフィール

86歳 女性 要介護度:2 施設入所中

ADL: 日常生活は自立。服薬は声かけで実施。
認知機能: 見当識は保たれているが、薬の内容までは把握していない。
既往歴: 高血圧 脂質異常症
服薬情報: 朝食後に3種類内服。長期間変更なし。すべて一包化
性格: 穏やかで協力的。「お任せします」が口癖。細かいことは気にしないタイプ。
生活歴: 主婦歴が長く、毎日決まった習慣を大切にする。若い頃から周りに流されることが多く、本人もそれを苦に思っていなかった。
現在の生活リズム: 6時起床、7時朝食、朝食後に内服。
環境: 比較的落ち着いた環境で、入退所も少なくメンバーは固定的。大きな事故もなく「安定しているフロア」と認識されている。
職員同士の関係も良好で、業務はスムーズに流れている。

■状況

朝食後の配薬時間、このフロアを3年間担当している担当職員Cは、
いつも通り薬カートから薬を取り出し、食堂で順番に配薬していた。

Aさんに手渡し、すぐに隣の利用者への服薬介助を行った。
Aさんは疑問を持たず服用した。

職員Cは、配薬チェックをする際に薬包に書かれた名前を見て誤りに気づく。
隣席の利用者の降圧薬が含まれていた。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 長期間安定していることは、安全であるといえるでしょうか?
  • 今回の状況で、特別な異常はありましたか?
  • この環境が続いた場合、他にどんなことが起こり得ますか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 配薬時の氏名確認が不十分だった。
  • 手渡し後の最終確認を行わずに次の介助へ移った。

■背景にある原因

  • 長期間同じフロアを担当していることによる慣れや思い込みがあったのかもしれない。
  • 業務がスムーズに流れている環境により、確認手順が形式化していた可能性がある。
  • 同時に複数利用者の対応を行う中で、注意が分散していた。

■対策

  • 配薬時は氏名・薬包の一致を声出しや指差しで確認する手順を徹底する。
  • 利用者にも「名前の確認」など簡単な参加を促し、確認の層を増やす。
  • 一人ずつ完結する配薬手順(手渡し〜服用確認まで)を明確にする。
  • 定期的に誤薬リスクについて振り返り、慣れによる手順省略を防ぐ。

見方のポイント

この事例は「確認不足」と捉えられやすいですが、
その背景には“慣れ”や“安定している環境”が影響していた可能性があります。

事故が少ない環境ほど、手順が形だけになりやすく、無意識の省略が起こりやすいとも考えられます。

また、利用者の協力的な姿勢が、結果的にチェック機能を弱めていた側面もあります。
対策としては、個人の注意に依存するのではなく、「必ず確認が行われる流れ」を業務として再設計する視点が重要と考えられます。

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