飲み忘れた薬の行方|(誤薬・服薬/10分)

本記事の趣旨

この記事では、注意転換による服薬中断と確認不足が招く誤薬の事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】飲み忘れた薬の行方(誤薬・服薬)

■利用者プロフィール

84歳 女性 要介護度:2 在宅(デイサービス利用)

ADL:歩行は自立。食事やトイレ動作も自立している。
認知機能:軽度〜中等度の認知症あり。会話は成立するが、直前の出来事を忘れることがある。物事に気を取られると、途中の行動を忘れてしまうことがある。
性格:周囲への気遣いが強く、他の利用者や職員の様子をよく気にしている。落ち着きがなく注意が散りやすく、目に入ったことに意識が向きやすい。
生活歴:長年商店を営んでいた。来客対応など、人を優先する生活が長かった。
既往歴:高血圧 脂質異常症
服薬情報:昼食後に一包化薬あり
環境:昼食後の服薬は、デイサービス職員がテーブル上に薬を置き、声かけして本人が服用する方法で行っている。
現在の生活リズム:昼食後は同席の利用者と会話することが多い。
直近の変化:最近、会話中に「何をしていたか忘れた」と話す場面が増えている。

■状況

昼食後、職員が利用者のテーブルに一包化薬を置き、
「お薬お願いしますね」と声をかけた。

利用者は「はい」と返事をしたが、
その直後、隣の利用者に話しかけられ会話が始まった。

その後の入浴の際、上着のポケットにその日服用するはずの昼の薬が未開封のまま入っているのを発見した。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • この利用者が薬を飲まなかった理由は何が考えられますか?
  • 「声をかけた」という対応だけで十分だったでしょうか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 声かけ後に服薬が完了の確認をしなかった。
  • 会話により注意が逸れ、服薬行動が中断された。

■背景にある原因

  • 注意が散りやすく、途中の行動を忘れやすい認知特性があった可能性がある。
  • 周囲への関心が強く、会話が優先されやすかったのかもしれない。
  • 昼食後の会話が多い環境で、服薬に集中しにくかった。
  • 直近で「途中の行動を忘れる」変化が見られていたが、対応に十分反映されていなかった

■対策

  • 服薬時は会話が入りにくいタイミングや環境を設定する。
  • 「今から薬を飲む」など行動を明確に意識づける声かけを行う。
  • 服薬後に空包確認など、完了を確認する仕組みを取り入れる。
  • 認知機能の変化(途中忘れ)をチームで共有し、関わり方を調整する。

見方のポイント

この事例は「飲み忘れ」と捉えられやすいですが、
背景には注意の切り替わりや環境の影響が考えられます。

声かけに反応できていても、その後の行動が継続されない点は、認知機能の特性として起こり得ます。
また、会話が自然に入りやすい環境では、行動の中断が起こりやすい状況ともいえます。

対策としては、「行動を開始させる」だけでなく「完了まで支える」関わり方を設計しつつ、
本人の尊厳・自立支援に配慮した視点が重要と考えられます。

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