ティルト式車椅子と夕薬|(誤薬・服薬/20分)

本記事の趣旨

この記事では、服薬タイミング管理の不徹底と姿勢配慮優先による判断遅延が重なり未服薬が生じた事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】ティルト式車椅子と夕薬(誤薬・服薬)

■利用者プロフィール

84歳 男性 要介護度:4 在宅(デイサービス利用) パーキンソン病あり

ADL: 屋内はティルト・リクライニング式車椅子使用。立位は全介助。服薬は手渡し、見守り。
認知機能: 軽度の注意力低下あり。理解力は保たれている。
福祉用具: ティルト・リクライニング式車椅子 体幹保持クッション 電動ベッド
既往歴: パーキンソン病 慢性心不全
服薬情報: 昼・夕に内服あり。症状コントロールに時間厳守が必要な薬剤を含む。一包化。
環境: 妻と二人暮らし。妻が服薬管理。
直近の変化:車椅子上での姿勢が崩れるようになってきたため、体幹保持クッションを変更して様子を見ている。

■状況

ある日、デイサービスから帰宅後、妻が夕薬を準備した。
Aさんは「今は姿勢がきついから、あとで飲む」と話す。

当日は午後から姿勢が不安定で、車椅子はやや強めにティルトされていた。
妻は一包化薬を開封せず、そのまま車椅子背面のポケットに入れておいた。

夜間、呼吸が荒くなり救急搬送。
病院で確認すると、夕薬は未内服だった。

デイサービス側では、当日の昼薬は確実に内服できていたことが記録されていた。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • ティルト角度や姿勢保持は、服薬行動に影響しそうですか?
  • 福祉用具の変更(クッション)は関係しそうですか?
  • デイサービスと妻との間で、情報共有はできていたでしょうか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 服薬の後回しによる未内服。
  • 服薬状況の最終確認が行われなかった。

■背景にある原因

  • 姿勢不良により服薬行為そのものが負担になっていた。
  • 時間厳守が必要な薬剤であるという情報の重要度が十分共有されていなかった。

■対策

  • 姿勢が安定したタイミングで服薬できるよう、事前に体位調整を行う。
  • 時間厳守薬については、優先度と対応方法を家族と明確に共有する。
  • 後回しにする場合の具体的な再確認手順(声かけ・時間設定)を決めておく。

見方のポイント

未内服という結果だけで見ると「確認不足」と捉えやすいですが、
背景には「その場で服薬できない身体状況」と「後回しを許容する流れ」が重なっています。

特に時間厳守の薬剤では、「いつでも飲める」という前提が崩れた時の対応設計が重要になる。

対策は、単に注意を促すのではなく、「どのタイミングで・誰が・どう確認するか」を具体化することが有効と考えられます。
また、在宅では家族の判断に委ねられる場面が多いため、事業所と家族間での判断基準の共有がリスク低減につながる場合があります。

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