その申し送り、届いていましたか?|(夜勤/20分)
本記事の趣旨
この記事では、情報共有の曖昧さと安全機器未作動が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】その申し送り、届いていましたか?(夜勤)
■利用者プロフィール
87歳 男性 要介護度:3 施設入所中 軽度認知症あり
ADL: 室内は伝い歩き。トイレは見守り。
認知機能: 短期記憶低下あり。夜間に混乱することがある。
福祉用具: ベッド柵使用。夜間はセンサーマット設置。
性格: 自尊心が高く、できることは自分でやろうとする。
生活歴: 元会社員。規則正しい生活を好む。
既往歴: 高血圧 軽度脳梗塞既往
服薬情報: 降圧薬 睡眠導入剤(就寝前)
環境: 個室。トイレは居室から5mほどの場所にあり、途中手摺りの無い区間がある。
現在の生活リズム: 21時就寝。夜間1〜2回トイレに起きる。
直近の変化: 3日前から日中のふらつきが増えていた。
■状況
夜間2頃、廊下で座り込んでいるところを発見する。
Aさんは「トイレに行こうと思って転んだ」と話す。
当日の夜勤者は応援勤務で一人夜勤、Aさんを担当するのは初めてだった。
日中、Bさんには立位時のふらつきが見られ、
早番職員が「最近少し危ないかもしれない」と口頭で話していた。
記録には
「立位時ふらつきあり。経過観察」と入力されており、
夜勤者も申し送り時に記録の確認はしたものの、
巡視の強化などは特に実施しなかった。
また、センサーマットは設置されていたが、
その日はコンセントが抜けており作動していなかった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 夜勤者が把握できた情報は、十分だったでしょうか?
- 応援勤務者に対して、どのような申し送りをすべきでしたか?
- センサーマットが作動しなかったことは、どの段階で気づくことができたでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- センサーマットが作動しておらず、離床に気づけなかった。
- 巡視の強化をしなかった。
■背景にある原因
- 日中からふらつきが見られていたが、夜間の具体的な対応に落とし込まれていなかった。
- 「経過観察」という記録表現が、リスクの具体性を弱めていた可能性がある。
- 応援勤務・初担当により、利用者の状態把握が十分でなかった可能性。
- センサーマットの作動確認など、環境点検が十分でなかった。
■対策
- 「ふらつきあり」のような変化は、時間帯別のリスク(特に夜間)として具体的に共有する。
- 必要に応じて、巡視頻度の調整やトイレ誘導の事前対応を検討する。
- 応援勤務者でも把握しやすいよう、注意点を簡潔にまとめた申し送りを整備する。
- センサーマットなど機器の作動確認を、夜勤開始時のチェック項目として明確化する。
見方のポイント
この事例は、転倒そのものだけでなく、
「変化がどう共有され、どう行動に反映されたか」が重要な視点になります。
「ふらつきあり」という情報は存在していましたが、
それが夜間の具体的なリスク対応にはつながっていなかった可能性があります。
また、センサーマットの不作動も含め、複数の小さな要素が重なった結果とも考えられます。
対策としては、情報の“有無”ではなく“使われ方”に着目し、誰が見ても同じ行動につながる形で整理することが重要と考えられます。



