他の人の薬も飲んでしまったAさん|(誤薬・服薬/30分)
本記事の趣旨
この記事では、注意分散と他者同調行動に加え配薬環境の混在が重なり誤薬が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】他の人の薬も飲んでしまったAさん
(誤薬・服薬)
■利用者プロフィール
83歳 女性 要介護度:2 施設入所中
ADL:歩行・食事ともに自立。服薬は職員の声かけで実施しているが、自分で手に取って飲むこともある。
認知機能:軽度の認知症あり。会話はスムーズだが、直前の行動や指示を忘れることがある。注意が逸れると別の行動に移りやすい。
性格:人と関わることを好み、誰かが近くにいると話しかけることが多い。待つことが苦手で、思い立つとすぐ行動する傾向がある。
生活歴:地域活動に積極的に参加していた。人と交流することが生活の中心だった。
既往歴:高血圧 骨粗鬆症
服薬情報:朝・昼・夕に一包化薬あり。昼食後の薬は内容が似ている他利用者と隣席になることがある。
環境:食堂で複数利用者が同時に食後の服薬を行う。職員はテーブルごとに順番に配布している。
現在の生活リズム:食後は周囲の利用者と会話することが多く、席を立って他のテーブルへ行くこともある。
直近の変化:最近、他利用者の行動に合わせて動く場面が増えており、自席を離れることが多くなっている。
■状況
昼食後、職員がテーブルごとに薬を配布していた。
Aさんは隣の利用者と会話をしており、職員にも頻繁に話しかけていた。
職員は会話に応じながら薬を手渡し、服用を確認した。
その後、Aさんは席を立ち、別のテーブルへ移動した。
移動先のテーブルにも薬が置かれており、Aさんはその薬にも手を伸ばし、そのまま服用してしまった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 環境や配置は、この状況に影響していそうでしょうか?
- 「会話しながらの対応」は、どのような影響を与えたでしょうか?
- Aさんの行動は、予想できたことでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 薬が無管理の状態で置かれていた。
■背景にある原因
- 複数利用者が同時に服薬する環境で、薬の取り違えが起きやすい配置だった可能性がある。
- 自席を離れる行動が増えていたが、服薬時のリスクとして十分に共有されていなかった
■対策
- 服薬は「一人ずつ完結させる」流れとし、手渡し後は服用完了までその場で確認する。
- 薬をテーブルに置いたままにせず、配布と同時に本人へ直接手渡しし、離席時は一旦回収する。
- 「今はお薬の時間なので、ここで一緒に待っていましょうか」など、行動を区切る声かけを行う。
見方のポイント
背景には行動特性と環境の組み合わせが影響していた可能性があります。
特に「人と関わること」が行動の起点となり、結果として服薬行動に影響していた点が一つの視点です。
また、複数人が同時に服薬する場面では、わずかな注意の逸れが重なりやすい状況も考えられます。
個人の特性だけでなく、場面の設計や手順の流れから捉えることが重要になる場合もあります。



