共有されなかった変化|(転倒・転落/10分)

本記事の趣旨

この記事では、状態変化の共有漏れと従来認識の継続が重なった転倒の事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】共有されなかった変化(転倒・転落)

■利用者プロフィール

85歳 女性 要介護度:3 施設入所中

ADL:居室内は手すりや家具を使って歩行可能。トイレも見守りで対応しているが、立ち上がり時にふらつきがある。
認知機能:軽度の認知症あり。日常会話は可能だが、その場の判断が不十分なことがある。
福祉用具:ベッドサイドとトイレに手すり設置。歩行器は状況に応じて使用。
性格:比較的マイペースで、自分のタイミングで動くことが多い。遠慮はあまりなく、思い立つとすぐ行動する。
生活歴:一人暮らしが長く、身の回りのことは自分で行ってきた。
既往歴:変形性膝関節症 軽度の貧血
環境:居室からトイレまでは数歩の距離。夜間は職員の巡視あり。
現在の生活リズム:トイレは日中・夜間ともに自分で行こうとすることが多い。
直近の変化:前日の日中帯にトイレ前でふらつきが見られ「トイレは付き添いをして様子見」と判断されていた。

■状況

日中、Aさんが居室から一人でトイレへ向かって歩き出した。
近くにいた職員は、普段通り「見守りで可能な方」という認識で、そのまま様子を見ていた。

Aさんはトイレ前で方向転換をした際にバランスを崩し、そのまま転倒した。

前日の判断はAさんの個人記録に記入されていたが、夜勤者が普段通りにファイルに綴じて棚にしまっていた。
また前日日勤職員→夜勤者→当日早番職員に口頭での申し送りはされていたが、当該職員にはされていなかった。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 情報共有は、どのような方法で行われるべきだったでしょうか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 直近の状態変化に応じた介助が行われていなかった。

■背景にある原因

  • 記録が閲覧されにくい形で保管され、実際の行動に反映されにくかった。
  • 「普段は見守りで可能」という既存の認識が優先されたのかもしれない。

■対策

  • 記録だけでなく、当日のケアに直結する情報を簡潔にまとめて共有する仕組みを整える。
  • 申し送りの範囲を明確にし、関係する職員全員に確実に伝わる方法を検討する。

見方のポイント

この事例は転倒そのものよりも、「変化した情報がどう扱われたか」に注目することが重要です。

前日にリスクは認識されていたものの、それが当日の行動に結びついていなかった可能性があります。
また、「普段通りできる方」という既存の認識が、新たな情報より優先されたとも考えられます。

対策としては、情報を“記録する”だけでなく、“誰でも同じ行動につながる形で共有する”という視点が重要と考えられます。

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