立てる人だから|(転倒・転落/20分)
本記事の趣旨
この記事では、見守り判断の過信と自立発言への追従が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】立てる人だから(転倒・転落)
■利用者プロフィール
89歳 女性 要介護度:3 施設入所中
ADL:居室内は歩行器を使用して移動、見守り程度。立ち上がりは手すりがあれば可能。排泄はトイレで自分で行える。
認知機能:軽度の認知症あり。基本的な会話は可能だが、自分の身体能力を過信する傾向がある。
福祉用具:歩行器 居室内手すり設置
性格:自立心が強く、「大丈夫、大丈夫。自分でできるから」が口癖。
既往歴:変形性膝関節症
環境:居室は個室。ベッドからトイレまでの距離は約4m。職員Bは2週間前に常勤で入職し、日勤帯は独り立ちしている。介護歴は1年程。
直近の変化:1か月前に立ち上がり時にふらつきがみられるようになったため「立ち上がり時は側での見守りを行うこと」と申し送りノートに記入されている。
■状況
夕方の時間帯。
職員Bは居室前を通りかかった際に、Aさんがベッドから立ち上がろうとしている様子に気がついた。
「トイレですか?」と声を掛けると、Aさんは「うん、自分で行けるから大丈夫」と答え、
ベッド横に置いてあった歩行器を使い立ち上がった。
職員Bは数秒その様子を見て、安定しているように見えたため、
「何かあったら呼んでくださいね」と声をかけて、その場を離れた。
5分後、「ドン」という音が聞こえ駆けつけると、居室内の床に座り込んでいるAさんを発見した。
歩行器は少し離れた場所に倒れており、
Aさんはベッドと歩行器の間で尻もちをつくような姿勢になっていた。
Aさんは「トイレはまだ行っていない」と話している。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 職員Bがその場を離れた後、Aさんはどんな行動をしていたと考えられますか?
- 申し送りノートの内容は、職員Bに伝わっていたと思いますか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 見守り不足
- 立ち上がり時の介助未実施
■背景にある原因
- 「自分でできる」という思いが強く日常的に支援を受け入れにくい傾向があり、職員の「その場を離れる」判断に繋がった。
- 経験の浅い職員にとって、どの程度介入すべきかの判断基準が曖昧だった。
- 申し送り内容(立ち上がり時の見守り)の実施が徹底されていなかった。
■対策
- 本人の意向を尊重しつつ、「最初だけ見守る」など受け入れやすい関わり方を工夫する。
- 立ち上がり時の見守りの必要性について、具体的な場面を共有し認識を揃える。
見方のポイント
職員が一度は見守りを行っているものの、
「大丈夫そうに見えた」という判断で離れた点が一つの契機となっている可能性があります。
ただし、その背景には本人の自立志向や申し送り内容の運用の曖昧さ、
経験年数による判断のばらつきなどが重なっていたとも考えられます。
また、立ち上がりから移動完了まで付き添う対応は安全性を高めることができますが、
業務負担の増加や本人の抵抗感につながる側面もあります。



