時間に追われ、思わず握ってしまった手首|(入浴/20分)

本記事の趣旨

この記事では、入浴介助の焦りと配慮不足が重なり皮下出血を伴う外傷が発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】時間に追われ、思わず握ってしまった手首
(入浴)

■利用者プロフィール

89歳 女性 要介護度:3 施設入所中 下肢筋力低下あり

ADL: 屋内は手すり使用で歩行可能。入浴時はシャワーチェア使用で一部介助。
認知機能: 軽度認知症あり。理解力は概ね保たれている。
既往歴: 変形性膝関節症 高血圧
性格: 遠慮がちで、職員に気を遣うことが多い。入浴はあまり好きではなく、本人の意向でシャワーのみで実施している。
環境: 個浴で順番に入浴。午後は入浴利用者が多い。衣服の脱着と洗身を職員2名で手分けして行っている。

■状況

その日の入浴は予定よりやや遅れて進んでいた。

入浴を担当する職員Bは、Aさんの洗身を終えたところで脱衣所にタオルを忘れたことに気が付いた。
Bは「少し待っていてください」と声をかけ、シャワーチェアに座った状態のAさんを残してタオルを取りにいった。

脱衣所では次の利用者の準備をしている職員から、
「もう次の人、準備終わっています」と声をかけられた。

浴室に戻ってAさんの体を拭いている際に右手首のあたりを握ってしまい、
Aさんは「痛い」と声をあげた。

翌日、Aさんの右手首に内出血ができてしまった。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 事業所全体の原因として、考えられることはありますか?
  • 利用者の体を握る、という行為についてどう思いますか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 急いだ介助により、身体に負荷がかかるケアをしてしまった。

■背景にある原因

  • 入浴が遅れ気味で、全体的に時間的余裕が少なかった。
  • タオルの準備不足など、事前準備が十分でなかった。
  • 次の利用者準備の声かけにより、焦りが生じたのかもしれない。
  • 入浴介助時の身体の支え方や注意点について、統一した方法の共有が不十分だった可能性がある。

■対策

  • 入浴前の物品準備を徹底し、スムーズな介助ができるようにする。
  • 入浴業務の流れや人員配置を見直し、焦りが生じにくい環境を整える。
  • 入浴の予定時間を調整するために、一日の業務の流れを見直す。
  • 介助時は関節部ではなく体幹に近い部位を支えるなど、負担の少ない介助方法を再確認する。

見方のポイント

この事例は「手首を強く持った」という行為だけでなく、その前後の流れに注目することが重要です。

物品の取り忘れや次の利用者対応などが重なり、介助のリズムが崩れた可能性があります。
また、入浴にかけられる時間が不十分だった可能性も考えられます。

対策としては、個々の技術だけでなく、「中断や再開があっても安全に続けられる流れ」を整える視点が有効と考えられます。
また、現在の利用者全員の能力、生活リズムなどを考慮して、一日の流れを定期的に見直すことも重要です。

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