見守りが届かなかったテーブル|(誤嚥・食事/20分)
本記事の趣旨
この記事では、食事介助の中断と多重対応による観察不足が重なり誤嚥が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】見守りが届かなかったテーブル(誤嚥・食事)
■利用者プロフィール
91歳 女性 要介護度:4 施設入所中
ADL:移動は車椅子全介助。食事は基本的に全介助。自分でスプーンを持つことはあるが、口元までうまく運べないことが多い。
認知機能:中等度の認知症あり。食事動作の理解はあるが、注意が散りやすく、口に食べ物が残っている状態でも次の一口を受け入れてしまうことがある。
性格:自分の意志を表現することはほとんどなく、
既往歴:脳梗塞既往あり。嚥下機能低下が指摘されている。
服薬情報:降圧薬 抗血小板薬を内服
環境:食堂で他の利用者と同時に食事。テーブルは2つあり利用者4名、5名と分かれている。職員配置は2名。
現在の生活リズム:昼食は食堂で職員の介助を受けながら摂取している。食事に時間がかかるため、介助は途中で他利用者の対応と並行して行われることがある。
直近の変化:ここ最近、食事中に軽くむせる場面が増えている。
■状況
昼食時間。
職員BはAさんの食事介助を行いながら同テーブルの他の利用者の見守りを並行して行い、
もう一人の職員Cは全体の見守りをしながら食器洗いをしていた。
別の利用者が立ち上がろうとしたため、職員Bがその対応のため一度その場を離れた。
その間、利用者の前にはまだ食事が残っていた。
しばらくして戻るとAさんは自分でスプーンを使い食事を続けていたが、
数秒後、強く咳き込み始めた。
Aさんの口の中には食べ物が多く残っていた。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 食堂の環境や人員配置は、どのように影響していそうですか?
- 職員同士の連携は、できていたでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 介助中断中に自己摂取してしまった。
- 口腔内に食べ物が残った状態で次の摂取が行われた。
■背景にある原因
- 介助が他利用者対応と並行され、継続的な観察が途切れやすい配置だった。
- 人員配置上、食事介助の優先度と役割分担が曖昧だった。
- 「むせの増加」という変化に対するリスク認識と対応の更新不足。
■対策
- 介助中断時は食事を一時的に手の届かない位置へ下げるなど環境調整を行う。
- 食事時間帯の人員配置や業務(食器洗い等)の優先順位を見直す。
- むせの増加が見られる場合、食形態・一口量・姿勢の再評価を実施する。
見方のポイント
咳き込みという結果は、単発の介助中断だけでなく、
「継続的な観察が途切れる状況」と「本人の特性(口腔内残留の認識困難)」が重なっている可能性があります。
特に、むせの増加という変化がありながら、介助方法や環境が従来のまま維持されている点が重要な視点かもしれません。
対策は個々の注意だけでなく、「中断を前提とした手順設計」や「誰がどこまで見るか」の整理が有効です。
食事介助では、摂取の進行ではなく「安全に飲み込めているか」を基準に関わる視点が求められます。




