席替えのその日から|(誤嚥・食事/20分)

本記事の趣旨

この記事では、環境変化による注意分散と周囲同調行動が重なり誤嚥が発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】席替えのその日から(誤嚥・食事)

■利用者プロフィール

82歳 女性 要介護度:2 施設入所中 軽度の右片麻痺

ADL: 食事は自立。箸を使用。やや食べるペースが速い。移動は見守りで可能。
認知機能: 軽度認知症。見当識は保たれているが、周囲の刺激に影響を受けやすい。
既往歴: 脳梗塞(3年前)高血圧
福祉用具: 高さ調整された椅子を使用。足底が床にやや届きにくい。
性格: 周囲に合わせようとする傾向が強く、周囲が動くと自分も急ごうとする。
生活歴: 息子夫婦と長年同居していた。嫁のことを可愛がっており、優しくも時には厳しく接してきた。
現在の生活リズム: 毎日ほぼ同じ時間に食事。決まった席で食べている。
直近の変化: 同テーブルの利用者が退所し、席配置が変更になった。

■状況

昼食時、その日はテーブル配置が変更され、Aさんの席はこれまでの壁側から通路側へ移動していた。
配膳後、職員は他利用者の介助対応に入っていた。

Aさんは自力で食事を開始。
数分後、突然むせ込み、強い咳込みが見られた。
口腔内にはまだ十分に咀嚼されていない煮物が残っていた。

食事形態は普段通りの「常食・一口大」だった。

通路側の席は、職員の往来が頻繁にある場所だった。
また、Aさんの正面席には初めて同席する利用者が座っていた。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 席の変更は、Aさんにどのような影響がありそうですか?
  • 姿勢は食事動作に関係しそうですか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 食事中の注意が分散していた。
  • 十分に咀嚼されていない状態で飲み込もうとした。

■背景にある原因

  • 席配置の変更により、周囲の動きや刺激が増えたことで食事に集中できなかったのかもしれない。
  • 周囲に合わせようとする性格から、無意識に食事ペースが速まった可能性がある。
  • 軽度認知症により、環境変化への適応や注意配分が難しかった可能性がある。
  • 椅子の高さや足底接地の不十分さが、安定した姿勢を取りにくくしていたのかもしれない。

■対策

  • 席配置変更時は、利用者ごとの影響を評価し、落ち着いて食事できる環境を優先する。
  • 通路側など刺激の多い場所では、必要に応じて見守りや声かけを優先的に行うようにする。
  • 足底がしっかり接地するよう、椅子や足台の調整を行う。
  • 環境変化時には、一定期間様子観察とリスクの再評価を行う。

見方のポイント

この事例は「早食い」や「咀嚼不足」といった行動面だけでなく、環境変化の影響を考えることが重要です。

席の移動により、視覚・聴覚刺激が増え、注意が分散したことで普段のペースが維持できなかった可能性があります。

また、性格や認知機能の特性が、環境の影響を受けやすくしていたとも考えられます。
対策としては、個々の特性に加えて「環境が変わったときに何が起きるか」という視点でリスクを捉えることが有効と考えられます。

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