いつも問題なく食べていた人の咳き込み(誤嚥・食事/30分)
本記事の趣旨
この記事では、周囲への配慮から無理に自己摂取を続ける心理と早食い傾向、
さらに見守り体制の手薄さが重なり誤嚥が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】いつも問題なく食べていた人の咳き込み
(誤嚥・食事)
■利用者プロフィール
92歳 女性 要介護度:3 施設入所中 右手に軽い振戦あり 上下総入れ歯
ADL:歩行は見守りで可能。食事は食べこぼしがみられるが自己摂取している。更衣・排泄は一部介助。座位保持は安定している。
認知機能:軽度の認知症あり。会話は可能で理解力もあるが、直前の出来事を忘れることがある。
性格:穏やかで遠慮がち。周囲に気を遣う性格で「大丈夫です」「できます」と言うことが多い。
生活歴:長年主婦として家族の食事を作ってきた。「食べること」に強い関心があり、食事の時間を楽しみにしている。
入所経緯:自宅での転倒をきっかけに入院。退院後、独居生活が困難となり入所。
生活リズム:食事は毎回ほぼ完食。食べるペースはやや早いが、これまで大きなトラブルはなかった。好き嫌いなく何でも食べる。
環境:食事はテレビが点いたリビングで他利用者と一緒に摂取。職員1名が全体を見守りながら必要時介助している。
■状況
昼食時、主菜は煮魚、副菜は和え物、汁物が提供されていた。
職員は配膳後、他利用者の食事介助を行っていた。
しばらくして「ゴホッゴホッ」と強く咳き込む声があり確認すると、
前かがみになり顔を赤くしているところを発見した。
口腔内には食物が残っており、飲み込めずにいる様子だった。
本人はその後、「大丈夫、大丈夫」と話されている。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- この方の性格は影響しそうですか?
- 「これまで大丈夫だった」ことは関係ありそうですか?
- 職員の見守り方で気になる点はありますか?
- 食事環境や提供方法に工夫できる点はありますか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 食事ペースが早く、一口量が多くなっていた。
- 食物を十分に咀嚼・嚥下できないまま飲み込もうとした。
■背景にある原因
- 上下総入れ歯や振戦の影響で、咀嚼や食物操作が不安定になっていたのかもしれない。
- テレビがついた環境や周囲の状況により、注意が分散していた可能性。
- 「大丈夫」と言う遠慮がちな性格により、食べにくさや異変を周囲に伝えにくかった。
■対策
- 入れ歯の装着状態やズレの有無を食前に確認し、違和感がある場合は調整や職員への申告を促す。
- テレビ音量を下げる、または食事中は消すなど、食事に集中しやすい環境を整える。
- 食事開始時に一口量やペースを確認し、
「ゆっくり食べましょう」など具体的に声をかけ、その後も数分間は継続して様子を見る。 - 「大丈夫」という言葉があっても、その前後の様子(咳き込み、表情変化)をもとに状態を判断し、
必要に応じて一度食事を中断して口腔内確認を行う
見方のポイント
この事例は「むせ込み」として捉えられますが、
その背景には食事動作や性格、環境が重なっていた可能性があります。
特に「問題なく食べられている」というこれまでの評価が、
その日の変化に気づきにくくしていた側面も考えられます。
また、本人の「大丈夫」という言葉と実際の状態に差がある場合もあります。
表面的なやり取りだけでなく、動作や表情の変化を含めて捉えることが一つの視点になるかもしれません。




