今日は歩けそう|(転倒・転落/10分)
本記事の趣旨
この記事では、体調の自己申告とリスクを予期できなかったことが招く転倒の事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】今日は歩けそう(転倒・転落)
■利用者プロフィール
87歳 男性 要介護度:2 施設入所中 脳梗塞後遺症あり
ADL: 屋内は歩行器使用で見守り歩行。立ち上がり時にふらつきあり。調子の良いときは器具無し見守り歩行。
認知機能: 軽度認知症あり。理解力は保たれているが、状況判断に波がある。
既往歴: 脳梗塞 高血圧
服薬情報: 降圧薬 睡眠導入剤
性格: 素直で真面目。健康志向で暇になると体操などをやりたがる。
環境: 居室からトイレまでは約10m。廊下は平坦。
■状況
午後16時、Aさんの居室からのトイレ誘導の際、
ベッド端に座っていたAさんは「今日は調子がいいから歩けそう」と話した。
立ち上がりにふらつきも見られなかったため、
職員は「大丈夫そうだ」と感じ、歩行器を使わずに軽く体に手を添えながらの歩行をした。
しかし、数m進んだところでAさんの膝が崩れ、膝を床につき内出血ができてしまった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 歩行器を使用するかどうかの判断基準は、マニュアル化すべきですか?
- 事故当時の歩行介助の方法について、注意する点はなんでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 歩行器を使用せず歩行したこと。
- 歩行途中で下肢支持力が低下し、膝折れが生じた。
■背景にある原因
- 歩行器を使わない状態での、膝折れへのリスクを認識できていなかった。
- 状態に波があることへの前提が、実際の介助方法に十分反映されていなかった。
■対策
- 立ち上がりだけでなく、歩行中の状態変化(膝折れなど)を想定した介助を行う。
- 状態に波がある利用者については、安全側に寄せた判断を基本とする。
見方のポイント
この事例は「歩行器を使わなかったこと」に着目されやすいですが、
その背景には“その場の状態をどう評価したか”という視点があります。
一時的に安定して見える場面があっても、歩行中に状態が変化する可能性は十分に考えられます。
また、本人の意欲や発言が判断に影響した点も重要です。
対策としては、「できる場面がある」ことを前提にしつつも、常に変動を見込んだ支援を組み立てることが有効と考えられます。



