大丈夫だと思っていた|(夜勤/30分)
本記事の趣旨
この記事では、夜間安定認識による見守り低下と遠慮による単独行動が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】大丈夫だと思っていた(夜勤)
■利用者プロフィール
79歳 男性 要介護度:2 施設入所中
ADL: 日中は自立歩行可能。夜間はややふらつきあり。トイレは見守り。
認知機能: 軽度認知症。理解力は保たれており、今いる場所が介護施設であることや自身の老化についても理解している。
時間帯によって注意力にばらつきあり。夜間は判断力が低下する傾向。
福祉用具: 居室内手すり設置。歩行器は本人判断により必要時使用。
性格: プライドが高く、注意されると表情が硬くなることがある。
生活歴: 元自営業。長年一人で店舗を切り盛りしてきた。体調不良時も休まず働いていた。
既往歴: 高血圧 腰椎圧迫骨折既往
服薬情報: 降圧薬 睡眠導入剤は頓用だが、ここ数日は連日使用している。
環境: 個室。トイレは居室外にあり、廊下を約10m移動する。夜間は廊下照明を減光している。夜勤は職員2名体制。
現在の生活リズム: 夜間トイレは0〜1回。ここ半年間、転倒歴なし。
直近の変化: 日中活動量がやや低下。食事量もわずかに減少している。
■状況
午前3時頃の出来事。
この利用者は「夜は安定している方」という認識が職員間で共有されていた。
2時の巡視では就寝を確認。
3時半の巡視時、廊下で転倒しているところを発見した。トイレ方向へ向かっていたと考えられる。
歩行器は使用していなかった。
本人は「起こすのは悪いと思って」と話している。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 半年間転倒がなかったことは、どう影響していそうですか?
- 直近の変化は、影響していそうですか?
- 「起こすのは悪いと思って」という発言から、どんなことが読み取れますか?
- 「安定している」という評価は、誰がしたものだと思いますか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■直接要因
- 歩行器を使用せずに移動したこと。
- ふらつきがあったのかもしれない。
■背景要因
- 「安定している利用者」という認識があり、リスクの再評価が行われにくかった可能性がある。
- 睡眠導入剤の連日使用により、夜間の覚醒時のふらつきや判断力低下が強まっていた可能性。
- 夜間の廊下照明が減光されており、移動時の安全確保が難しい環境だったのかもしれない。
■対策
- 「安定している利用者」についても、直近の変化(活動量低下や食事量低下など)を踏まえて定期的に見守り方法を見直す。
- 夜間にトイレへ行く可能性がある利用者については、就寝前に「遠慮せずナースコールを使用して良い」ことを具体的に伝え、繰り返し声かけする。
- 睡眠導入剤の連日使用が続いている場合は、服用状況と夜間の状態(ふらつき・覚醒状況)を記録し、医師や看護職と共有する。
- トイレ動線(居室〜廊下〜トイレ)の照明を足元が確認できる程度まで調整する。
見方のポイント
「夜間の単独移動による転倒」と捉えることもできますが、
その背景には認識や環境、身体状況の変化が重なっていた可能性があります。
特に「安定している」という評価は、状況の変化に気づきにくくする側面もあります。
また、本人の遠慮や生活歴に基づく行動も、支援のあり方に影響していると考えられます。
一時点の状態ではなく、直近の変化や時間帯による違いを含めて捉える視点が重要と言えます。





