▲見守らなくても平気な人|(転倒・転落/15分)

■利用者プロフィール

87歳 女性 要介護度:2 施設入所中 入所3年目

ADL: 室内は四点杖で自立。長距離は見守り。立ち上がりはやや不安定だが基本的に自分で行う。トイレ動作は見守りレベル。
認知機能: 軽度認知症。見当識はおおむね保たれているが、状況判断に甘さがみられることがある。
福祉用具: 四点杖使用。歩行器を勧められているが「そこまで年寄りみたいに思われたくないから嫌」と拒否している。
性格: 自立心が強く、他者に頼ることを好まない。「迷惑をかけたくない」が口癖。周囲からは「しっかりしている人」と見られている。
生活歴: 元商店経営。長年一人で切り盛りしてきた経験があり、判断は早い。
既往歴: 変形性膝関節症 高血圧。2年前に屋外での転倒歴あり。
服薬情報: 降圧剤 睡眠導入剤
環境: リビングの自席からトイレまでは約15m。テーブル間隔はやや狭い。床はワックス清掃後でやや滑りやすい状態。
現在の生活リズム: 昼食後はリビングで居眠りすることが多い。夕方は比較的活動的。
直近の変化: 2週間ほど前より「最近は足が重い」と話している。歩行自体は継続して自立。体調の変化なども特にみられない。

■状況

昼食後のリビング。職員は配膳の片付け対応中。
本人はいつものように四点杖を使用し、自席から立ち上がる。

職員は「この方は自立している」という認識があり、特に声はかけなかった。

数歩進んだところでバランスを崩し転倒した。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 環境面で気になる点はありますか?
  • 「足が重い」と話すようになったことに対して、どのような対応ができるでしょうか?
  • 自立支援や尊厳の保持という視点も踏まえて、今後この方を「独歩はリスクが高い人」と評価すべきでしょうか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。

事故の原因や対策に明確な正解はなく、いずれも仮説として捉える必要があります。
実際の結果を見ながら検証していくものであり、さまざまな視点から考えることに意味があります。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

■直接要因

  • 移動時の安全配慮不足

■背景要因

  • 「自立している」という周囲の認識が固定化し、状態変化への注意が向かなかった。
  • 日頃、昼食後に傾眠がみられることから、この日も眠気がありバランスを保てなかったのかもしれない。
  • 歩行器の提案が受け入れられず、現状の福祉用具が身体状態に適していなかった可能性がある。

■対策

  • 「自立している利用者」についても、状態変化の共有と再評価を定期的に行う。
  • 本人の生活リズムを考慮し、昼食後はリスクが高まることを共有する。
  • 本人の意向を尊重しつつ、福祉用具の再提案や代替案の検討を行う。

見方のポイント

この事例は、「自立している利用者」という認識のもとで、
見守りが省略されたことが一つの契機となった可能性があります。

本人の自立志向や支援を受けにくい心理、環境条件などが重なっていたとも考えられます。
また、身体機能のわずかな変化があっても、日常の中で見過ごされやすい状況だった可能性もあります。

常時付き添う対応は安全性を高める可能性がありますが、本人の意向や業務負担への影響も考慮が必要です。
一方で、時間帯や動作の切り替え場面に着目した見守りなど、現実的に実施しやすい工夫との組み合わせが一つの視点となります。

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