▲飲んだはずの薬|(誤薬・服薬/30分)
■利用者プロフィール
91歳 女性 要介護度:3 施設入所中 アルツハイマー型認知症
ADL: 指示を要することも多いが、動作自体は概ね自立。服薬は手渡し、見守り介助。少し耳が遠い。
認知機能: 中等度認知症。直前の出来事を保持できない。会話が嚙み合わないことが多く、取り繕い反応がある。
性格: 丁寧で遠慮がち。「迷惑をかけたくない」とよく話す。
生活歴: 元小学校教員。几帳面で責任感が強い。家族の話では「体が丈夫で風邪を引いているところさえ、見たことがない」
既往歴: 高血圧、脂質異常症
服薬情報: 朝夕で内服薬あり。降圧薬、抗血小板薬など計6種類
現在の生活リズム: 7時朝食、18時夕食。食堂で他利用者と摂取。
直近の変化: 最近、食後すぐに居室へ戻ることが増えている。
■状況
夕食後の服薬時間。担当職員Aが食堂で順番に配薬していた。
本人に声をかけると、
「もうさっき飲みましたよ」と答えた。
記録上は未投与であり、薬包もカートに残っているため、
A職員は「まだですよ」と説明し、薬を手渡し水とともに服用を確認した後、本人は居室へ向かった。
15分後、別の職員Bが更衣介助のため居室へ行くと、ゴミ箱の中に本人の同日朝の空の薬包が入っているのを発見する。
本人に確認すると「先生に言われたから、ちゃんと飲まないといけないと思って、さっき飲んだよ」と話す。
記録では、朝の服薬は「済」となっているが朝の担当職員はすでに退勤しており、実際に服用したかどうかは明確にならなかった。
翌朝、血圧が通常より低値を示した。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 朝の服用状況は、どのように評価できそうですか?
- 朝の薬包が居室のゴミ箱に入っていた理由は、どんなことが考えられますか?
- 取り繕い反応は、この場面に関係しそうですか?
- この方への「服薬確認」は、どこまで確認する必要がありそうですか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
事故の原因や対策に明確な正解はなく、いずれも仮説として捉える必要があります。
実際の結果を見ながら検証していくものであり、さまざまな視点から考えることに意味があります。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
■直接要因
- 服薬確認不足
- 記録と実際の不一致
■背景要因
- 「迷惑をかけたくない」という思いから、普段からその場を取り繕う発言がみられていたことが、職員の判断に繋がった。
- 朝と夕で担当職員が異なり、実施状況の正確な申し送りができていなかった。
- 服薬済みの確認が「本人の申告」や記録に依存していた。
■対策
- 服薬は原則としてその場での見届けと記録を一体化し、実施者が明確になるようにする。
- 服薬済みの多面的な確認のために、空の薬包を保管する方法を検討する。
- 朝夕の服薬状況を引き継ぐ際に、「服用を確認」「手渡した」など具体的な内容を共有する。
見方のポイント
この事例は、重複服薬の可能性という結果だけでなく、
「本人の発言」「記録」「実際の行動」が一致しない状況が生じていた点が重要な視点となります。
背景には認知機能の影響に加え、
本人の普段の性格から「この人の言葉を信用するのはリスクがある」との考えが職員間に生じていた可能性も考えられます。



