排便−8日の転倒|(夜勤/30分)
本記事の趣旨
この記事では、排泄コントロール不良と夜間見守り機器の機能不全が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】排便−8日の転倒(夜勤)
■利用者プロフィール
89歳 女性 要介護度:3 施設入所中 アルツハイマー型認知症
ADL:歩行はややふらつきがあるため付き添いが必要。食事は自己摂取にて毎食完食。
排泄はリハパンにパッドを使用しているが、日中は失禁はほとんどみられず排泄欲求も明瞭。
認知機能:会話の理解は可能だが、すぐに忘れてしまう。トイレ、居室の場所は理解しているが、夜間は時々間違えてしまうことがある。
性格:穏やかでのんびり屋。時々他者の行動に対して怒り出すことがある。
福祉用具:人感センサー
現在の生活リズム:朝は5時前に自分で起床し、その後昼食まではリビングで過ごすが、座っている時間が多い。午後は居室で寝ていることが多い。19時前後に就寝している。
便秘がひどく、毎回1週間以上排便がみられない。半年前からかかりつけ医の指示でセンノシド錠12㎎を朝食後に服用しているが改善されていない。
(KOT -1 ~ -3:1錠 KOT -4 ~:2錠)
■状況
23時頃、他利用者のトイレ介助をしていると、居室から「ドン」と音が聞こえ様子を見に行くと、ベッド横に座り込んでいるところを発見する。
ベッド上から床にかけて尿、軟便が多量に広がっていた。本人は「トイレに行こうと思ったら滑って転んだ」と話す。
センサーは鳴らなかった。また、靴を履かずに裸足であった。
この日、排便 -8日であり朝食後にセンノシド錠を2錠服用しているが排便がまだない。
最終排泄時間が就寝前の19時でありそれ以降熟睡していると、口頭での申し送りがあった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 靴を履いていなかった理由として、どんなことが考えられますか?
- 最終排泄時間の情報から考えられることはありますか?
- 転倒の対策として、排便コントロールを見直す必要はありそうですか?
- 現在の生活リズムは、便秘に影響していそうですか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■直接要因
- 排泄物により床が滑りやすい状態での移動。
- 裸足での歩行による滑りやすさの増加。
■背景要因
- 長期間の便秘により、急な排便が起きたのではないか。
- 睡眠状態が「熟睡」として捉えられ、夜間の排泄リスクが低く見積もられていた。
- 人感センサーが作動しない位置や動き方であった可能性。
- 就寝時の履物管理が明確でなかった。
■対策
- 便秘が継続している場合は、排便間隔や下剤使用後の経過を記録し、排便が予測される時間帯(夜間含む)の見守りを強化する。
- 就寝前にトイレ誘導を行うだけでなく、「夜間も排泄がある可能性」を前提にポータブルトイレの設置や動線の短縮を検討する
- 排便コントロールについて、医師や看護師と相談し下剤の変更や腹部マッサージ、食物繊維の摂取など便秘改善を図る。
- 人感センサーの設置位置や感知範囲を再確認し、就寝後は作動するかどうかを確認する。
- 就寝前に滑りにくい履物(かかとのある室内履きなど)をベッドサイドに準備し、起きた際に使用できるよう声かけと環境設定を行う。
見方のポイント
この事例は「夜間の転倒」と捉えられますが、
その直前に起きていた排泄状況にも目を向ける必要があるかもしれません。
便秘の持続と下剤使用の影響により、予測しにくいタイミングで排泄が起きていた可能性があります。
また、「熟睡している」という情報が、その後の見守りの前提になっていた点も一つの視点です。
一つの出来事としてではなく、
排泄・認知・環境がどのように重なったかを整理することで、別の対応の糸口が見えてくることもあります。



