この人は大丈夫という思い込み|(誤嚥・食事/10分)
本記事の趣旨
この記事では、自立評価への過信と体調変化の見落としが招く誤嚥の事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】この人は大丈夫という思い込み(誤嚥・食事)
■利用者プロフィール
89歳 女性 要介護度:2 施設入所中
ADL: 食事は自立。配膳後は自分で摂取可能。
認知機能: 軽度の認知機能低下あり。日によって注意力に波がある。
既往歴: 高血圧、軽度の脳梗塞既往
性格: しっかり者で世話焼き。よく「困ったことがあったらいつでも相談してね」と話している。
現在の生活リズム: 3食とも食堂で他利用者と一緒に摂取している。
直近の変化: 数日前に風邪症状があり、食欲がやや低下していたが無事に快復した。
■状況
昼食時、強く咳き込み、水を一気に飲もうとする様子が見られた。
その後も「大丈夫、大丈夫」と言いながら食事を続けようとした。
食事後、声がかすれ、軽い湿った咳が続いていた。
当時職員は他利用者の介助が重なり、食事介助が必要な方を優先して対応していた。
本利用者は「この人は自分で食べられるから大丈夫」と認識されており、特別な見守りは行われていなかった。
その日の主菜はややパサつきのある焼き魚だった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 数日前の風邪症状は影響しそうですか?
- 献立の内容によって、ケアの方法を変えるべきですか?
- 食事を続けようとした本人に対して、どのようなケアを行えばいいでしょう?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 「大丈夫」と考え見守りをしなかった。
■背景にある原因
- 軽度の認知機能低下により、むせ後の適切な行動判断が難しかったのかもしれない。
- 食事形態(パサつきのある焼き魚)が嚥下しにくかった可能性がある。
- 直前の体調不良後で、嚥下機能や体力が一時的に低下していた可能性がある。
- 直近の変化を考慮せず「自立して食べられる利用者」という認識により、見守りが薄くなっていた。
■対策
- 食後の声の変化や湿性咳など、誤嚥のサインを共有し観察を強化する。
- パサつきやすい食品には水分やとろみを検討し、嚥下しやすくする。
- 体調変化後は一時的に食事形態や見守りレベルを見直す。
- 自立している利用者にも、変化時には見守りを強化する基準を設ける。
見方のポイント
この事例は「特別な見守りをしなかった」ことに注目されやすいですが、
その背景には体調変化や食事内容、見守りの前提が影響していた可能性があります。
特に、「自立している利用者」は異変時の対応が遅れやすい傾向も考えられます。
また、「大丈夫」という本人の言葉が、そのまま安全の判断につながってしまった点も重要です。
対策としては、普段の自立度ではなく、「その時の状態変化」に応じて関わり方を調整する視点が有効と考えられます。



