食事を口から出してしまった理由|(誤嚥・食事/10分)

本記事の趣旨

この記事では、遠慮と意思表出の見落としが重なる誤嚥の事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】食事を口から出してしまった理由(誤嚥・食事)

■利用者プロフィール

82歳 女性 要介護度:4 施設入所中 アルツハイマー型認知症

ADL: 歩行は見守り、食事は集中力が続かず、3割ほど自己摂取した後は介助を要する。
認知機能: 日時の見当識低下あり。短期記憶障害が目立つ。
性格: もともと世話好きで遠慮がち。
生活歴: 専業主婦。家族の食事作りを長年担ってきた。
既往歴: 高血圧
環境: 4人テーブルでの集団食事。

■状況

昼食時、いつものように途中から食事が進まなくなったため、職員がスプーンを口元へ運び介助を行っていた。
しばらくすると、口の中のものを出し始め、理由を聞くと「もういらない」小さな声で答え、
周囲をきょろきょろ見ている様子もあった。

少し間を開けてから介助を再開したところ、強くむせ込み、しばらく咳が止まらなかった。

身体機能の急な低下や、発熱などの体調不良は確認されていない。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • むせ込む前の様子に、気になる変化はありますか?
  • 認知症の理解という視点で考えると、どのような症状が関係しそうですか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 口腔内に残留がある中で次の一口を入れた。
  • 本人の拒否サインを十分に捉えきれなかった。

■背景にある原因

  • 認知症により、満腹感や不快感を言語化しにくかったのかもしれない。
  • 周囲の刺激により注意が分散し、食事への集中が低下していた可能性が考えられる。
  • 「食べさせなければ」という意識により、本人のペースより介助が優先された。

■対策

  • 拒否や不快のサイン(視線・表情・発言)を食事ペースと照らし合わせて記録し共有する。
  • 食事介助の中断・再開時の手順(確認項目)をチームで共有する。
  • 必要に応じて、落ち着いて食べられる環境や席配置を検討する。
  • 医療と連携し栄養状態を評価しつつ、無理なく食べられる量を提供する。

見方のポイント

この事例は「むせ込み」という結果だけでなく、その前に見られていたサインの捉え方が重要です。

「もういらない」という発言や口腔内からの排出、視線の変化は、
嚥下準備が整っていないサインだった可能性があります。

また、食事を進めることが優先されると、こうしたサインが見過ごされやすくなります。

対策としては、「食べる量」だけでなく「食べられる状態かどうか」に注目し、
介助の中断や再開の判断を丁寧に行う視点が有効と考えられます。

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