飲んだと思った薬|(誤薬・服薬/30分)

本記事の趣旨

この記事では、認知症による取り繕い反応と服薬確認の思い込みが重なり、服薬ミスが発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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■利用者プロフィール

89歳 女性 要介護度:3 施設入所中

ADL:身体機能は十分に保たれているが、物忘れや実行機能障害などにより多くの動作に声かけ、見守りを要する。やや耳が遠い。
認知機能:会話の理解は概ね可能だが、理解できないと愛想笑いや適当な相槌を打ち、取り繕うようなそぶりを見せることがある。
性格:素直で愛想が良い。職員の指示には「分からなかったから、ありがとう」と笑顔で従うが、不信感を覚えると強く拒否することもある。
お節介焼きでもあり、誰に対しても ” 何かしてあげよう ” と行動することが多い。
生活歴:夫と共に鉄板焼き屋をやっていたが早くに夫を亡くし、以降は数人の従業員を雇いながら店主としてお店を切り盛りしてきた。
近所の子供達によくお店の料理をご馳走していた。
服薬情報:朝・夕食後 眠前薬 施設管理
現在の生活リズム:薬は食後に手渡し、その場で服薬確認を行う。
一日の水分摂取量が少なく「トイレに行きたくなるから」と拒否することが多い。

■状況

夕食後、Aさんは仲の良い隣席の方と楽し気に会話をしていた。
職員は一声かけていつものようにAさんに薬を手渡した。

Aさんは「お薬あるの?知らなかったわ」と驚いた様子だったが、すぐに口に入れた。
それを確認し職員はその場を離れた。

1時間後、別の職員がフロアの掃除をしていると、Aさんの席の近くで少し溶けた薬が落ちているのを発見した。
薬剤情報を確認すると、Aさんの夕食後の薬であることがわかった。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 落ちていた薬は、当日のものだと断定しても良いでしょうか?
  • 生活リズムの情報から、考えられる可能性はありますか?
  • 服薬直前の状況は、影響していそうですか?
  • 職員の行動は、Aさんに対する服薬確認として十分なものだったでしょうか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 服薬したことの確認が十分でなかった。
  • 服薬時の本人の理解状況を十分に確認していなかった。

■背景にある原因

  • 食後の服薬という日常的な手順であるため、確認方法が慣れによって簡略化されていたのかもしれない。
  • 「薬を口に入れた」ことと「服薬できた」ことを同じものとして捉えていた可能性が考えられる。
  • 会話に集中していたため、服薬への意識が向きにくい状況だったことが影響しているかもしれない。
  • 水分摂取を控える習慣があり、服薬時にも十分な水分を取らなかったのかもしれない。

■対策

  • 服薬確認の方法を職員間で共有し、いつ、誰が対応しても同じ水準で確認できるようにする。
  • 服薬後は、口腔内や飲み込みまで含めて確認するなど、Aさんに合わせた服薬確認方法を検討する。
  • 会話中など注意が別のことに向いている場合は、一度服薬に意識を向けてもらってから薬を渡す。
  • 水分摂取を一律に促すのではなく、本人が受け入れやすい飲み物やタイミングを検討し、服薬時に無理なく必要な水分を摂取できる方法を検討する。

見方のポイント

今回の出来事は、「薬が落ちていた」という結果から、「服薬確認不足」という結論になりそうな事例です。

一方で、普段のAさんの様子から読み取れる本人の特徴や、
服薬時の環境にも目を向けることで、「薬を落としてしまった理由」が見つかるかもしれません。

また、「口に入れた」ことと「服薬できた」ことには違いがあります。
その人に合わせた確認方法を考え共有すると、職員個人の注意だけに頼らない対策につながります。

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