センサーマットを避けた利用者|(転倒・転落/30分)

本記事の趣旨

この記事では、センサー回避行動と環境安全対策の不十分さが重なり転倒が発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】センサーマットを避けた利用者(転倒・転落)

■利用者プロフィール

89歳 女性 要介護度:3 施設入所中 左上肢に痺れあり

ADL:自立歩行だがややふらつきがある。夜中のトイレは車椅子使用。更衣一部介助。その他、声掛け見守り程度で行えている。
認知機能:軽度の認知症あり。短期記憶は難しいが、会話や状況の理解はできる。自室・トイレの場所は理解している。
性格:人当たりが良く冗談も好きだが、マイペースで一人の時間を好む。「自分の好きなようにやりたい」という思いが強く、介助拒否することがある。
生活歴:学生時代は陸上をやっていた。結婚後、娘2人を育てながら定年まで仕事をしていた。定年後は毎日近所を散歩していた。
夫を亡くした後は一人暮らしをしていた。徐々に認知機能の低下がみられるようになり訪問介護を利用するようになる。
入所経緯:自宅でタンスの下敷きになっている所を訪問介護スタッフが発見。肋骨骨折により入院し、その後入所となる。
入院中には「勝手にこんな所に入れて!」と暴言や暴力行為がみられた。
現在の生活リズム:日中は声を掛ければリビングに来てレクなどを楽しむが、やることがないと居室で横になって過ごすことが多い。夕食後は居室でテレビを観て過ごす。21時に眠剤を服用し就寝している。昼夜問わずトイレの回数は多い。
環境:居室ベッドの足元にセンサーマットを敷いているが、「鳴っちゃうから」と踏まないように自分で動かしてしまうことがある。
ベッドから扉までは3mほどの距離があり、途中に手すりは設置されていない。

■状況

20時頃、居室から「ドン」という音が聞こえたため訪室する。ドア前の床に体育座りの状態でいる所を発見した。本人は「トイレに行こうと思って転んだ」と話す。
センサーマットは元の位置からずれていた。
この時間帯、施設スタッフは1名体制であり、リビングには他の利用者が2人いた。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • この方はどんな性格の方でしたか?
  • 環境面で気になる点はありますか?
  • 20時という時間帯は、この方にとってどんな時間でしょうか?
  • 日中の生活スタイルは影響しそうですか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 見守り不足
  • センサーマット未作動(位置ずれ)

■背景にある原因

  • 「自分で動きたい」という思いが強く、介助を回避する行動傾向がある可能性がある。
  • センサーマットを避けるのは、過去のセンサー反応時の職員の対応に「自由を制限された」と感じる経験があったのかもしれない。
  • ベッドから扉までの動線に手すりがなく、支持物が不足している環境。
  • 日中の活動量の少なさが、筋力の低下に繋がっているのかもしれない。

■対策

  • 本人の意向を踏まえた関わり方(選択肢提示など)で介助受け入れを促す工夫を検討する。
  • 過去の関わりの中で不快に感じた場面がなかったかを振り返り、適切な対応の統一を図る。
  • ベッドから扉までの動線上に手すりや支持物の設置を検討する。
  • 日中の活動量を増やすために、本人の趣味・嗜好にあった楽しみを提供する。

見方のポイント

見守り不足として捉えられやすい事例ですが、
本人がセンサーマットを避ける行動や、介助を受けたくないという意向が影響している可能性も考えられます。

また、移動経路に支持物がない環境や日中の活動など、複数の要因が重なっていたとも見られます。
例えば、常時付き添いを行う方法は安全性を高める可能性がありますが、
業務負担の増加や他利用者の関係から現実に実施することは難しそうです。

また、本人の自立性への影響も考慮する必要があります。
環境調整や関わり方の工夫など、現実的に継続しやすい対応とのバランスをどのように取るかが重要です。

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