慣れた福祉用具で起きた夜間転倒|(夜勤/20分)
本記事の趣旨
この記事では、夜間動作の過信と歩行器ブレーキ未使用が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】慣れた福祉用具で起きた夜間転倒(夜勤)
■利用者プロフィール
82歳 女性 要介護度:2 施設入所中 軽度のパーキンソン症状あり
ADL: 室内は四輪歩行器で自立歩行可能。立ち上がり時やや不安定。
認知機能: 軽度認知症あり。見当識は保たれているが注意力低下が頻繁にみられる。
福祉用具: 四輪歩行器(ブレーキ付き・座面あり)を日常的に使用。
性格:自立志向が強く「私はなんでもできるで大丈夫!」とよく言っている。
生活歴: 主婦として家庭を支えてきた。町内会の活動にも積極的に参加していた。
入所経緯: 転倒歴が増え、在宅生活が困難となり入所。
既往歴: パーキンソン病(初期) 高血圧
服薬情報: 抗パーキンソン薬 降圧薬
環境: ベッド横に歩行器を配置。夜間は廊下の照明がやや暗い。
現在の生活リズム: 夜間2回程度トイレに起きる習慣あり。
直近の変化: 最近、夜間の動き出しがやや急ぐ様子が見られる。
■状況
午前2時頃、巡視中の職員が居室内で物音に気づき訪室すると、Aさんがベッド横で転倒しているのを発見した。
Aさんは「トイレに行こうとした」と話している。
歩行器はベッド横にあり、前方に少し動いた状態で止まっていた。ブレーキはかかっていなかった。
状況から、Aさんはベッドから立ち上がる際に歩行器に手をかけたが、歩行器が前方に動き、バランスを崩して転倒したと推測される。
Aさんは「いつも通りやっただけ」と話しており、特に焦りや異変の自覚はなかった様子である。
職員は、Aさんが普段から歩行器を自立して使用しているため、夜間も見守り中心の対応としていた。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 環境や配置で影響しそうな点はありますか?
- 利用者の性格は、この行動に関係しそうですか?
- 歩行器の使い方は、安全に行えていたでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 歩行器のブレーキ未使用のまま立ち上がろうとした。
■背景にある原因
- 軽度認知症による注意力低下で、ブレーキ操作などの一手順が抜けやすかった可能性がある。
- 歩行器のブレーキがかかっていない状態のまま設置していた可能性がある。
- 夜間の照明が暗く、視認性が低下していたのかもしれない。
- 「自立している利用者」という認識により、夜間のリスク共有や具体的な注意点の整理が不十分だった。
■対策
- 歩行器使用時の「立ち上がり前にブレーキ確認」の習慣化を、本人と一緒に再確認する。
- 歩行器の位置や向きを見直し、動き出し時に前方へ流れにくい配置の検討と設置時ブレーキの確認を義務化する。
- 夜間のトイレ動線やベッド周囲の照明を調整し、視認性を確保する。
- 「自立している利用者」に対しても、時間帯別(特に夜間)のリスクを整理し共有する。
見方のポイント
この事例は「ブレーキのかけ忘れ」といった表面的な行動だけで捉えると、再発防止が個人の注意に依存しやすくなります。
実際には、自立志向の強さや注意力低下、身体機能の変化、夜間環境など複数の要素が重なっていた可能性があります。
また、「普段できていること」が夜間や特定の場面では成立しにくい点も重要です。
対策としては、能力を前提にするだけでなく、「条件が変わる場面」に着目して支援を再設計する視点が有効と考えられます。



