本人に任せていた服薬管理|(誤薬・服薬/30分)
本記事の趣旨
この記事では、自己管理への過信と実態確認の不足が重なり服薬管理不備が生じた事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】本人に任せていた服薬管理(誤薬・服薬)
■利用者プロフィール
85歳 男性 要介護度:2 施設入所中
ADL:日常生活はほぼ自立。食事・移動ともに自分で行える。服薬も基本的には自己管理とされている。
認知機能:軽度の認知症あり。会話や理解は概ね良好だが、細かい手順や継続的な管理が曖昧になることがある。
性格:自尊心が高く、「自分でできている」と思われたい気持ちが強い。人前では弱さを見せず、問題があっても表に出さない。
生活はマイペースで、自分のタイミングで行動する。
生活歴:会社員として長年勤務。責任ある立場を経験しており、頼りになる存在として活躍していた。
既往歴:糖尿病 高血圧
服薬情報:毎食後に複数の内服あり。自己管理として居室で保管・服用している。
環境:服薬は本人管理だが、職員が定期的に残薬確認を行う体制。
現在の生活リズム:食後は居室に戻り、自分のタイミングで薬を飲む習慣。
直近の変化:ここ最近、食後すぐに服薬せず、時間が空いてから飲む様子が見られていたが、本人は「問題ない」と話していた。
■状況
職員は、この利用者について「自己管理ができている方」という認識を持っていた。
そのため、服薬後の確認は声かけ程度で済ませていた。
ある日、定期的な残薬確認を行ったところ、数日分の薬がそのまま残っていることが分かった。
利用者に確認すると、「ちゃんと飲んでいる」と話したが、
実際には飲み忘れや、まとめて飲もうとして残している様子が見られた。
これまで職員は、「この方はできている」という前提で関わっていたため、
具体的な服薬状況の確認はほとんど行っていなかった。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 自己管理の利用者に対して、どのような確認が必要でしょうか?
- 利用者の性格は、この状況にどのように影響していそうですか?
- 自己管理から施設管理へ移行する場合のリスクはあると思いますか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 服薬後の実施確認が十分に行われていなかった。
- 自己申告を前提とした管理となっていた。
■背景にある原因
- 「自己管理ができている利用者」という認識により、確認が簡略化されていた。
- 軽度認知症の影響で、継続的な服薬管理やタイミングの保持が難しくなっていた可能性がある。
- 食後すぐに服薬しない生活パターンが定着し、飲み忘れにつながっていた可能性がある。
- 自尊心の高さから、できていない状況を表に出しにくかったのかもしれない。
■対策
- 服薬は「食後すぐにその場で実施する」流れに変更し、食堂または居室で職員が服用完了まで確認する。
- 自己管理を継続する場合でも、服薬チェック表や服薬ボックスを用いて「実施したか」が本人・職員双方で見える形にする。
- 残薬確認の頻度を一時的に増やし、飲み忘れの傾向(時間帯・回数)を具体的に把握する。
- 本人に対しては「できていないことの指摘」ではなく、「一緒に確認する形」で関わり、申告しやすい関係性をつくる。
見方のポイント
背景には認識や関わり方の前提が影響していた可能性があります。
特に「できている」という評価は、確認の機会を減らす方向に働くことがあります。
また、本人の自尊心や認知機能の変化により、実際の状況と申告に差が生じていた可能性も考えられます。
個人の能力だけでなく「どのように確認する仕組みになっているか」を、
「本人の尊厳を守る」という視点も踏まえて捉えることが重要になる場合もあります。




