変更が重なったその週に|(誤薬・服薬/30分)
本記事の趣旨
この記事では、度重なる処方変更の差分共有と確認体制の不備が重なり誤薬が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】変更が重なったその週に(誤薬・服薬)
■利用者プロフィール
91歳 女性 要介護度:4 施設入所中 心不全・糖尿病あり
ADL: 移動は車椅子。更衣・整容は一部介助。服薬は全介助。
認知機能: 中等度認知症。日時の見当識は不安定。自分の薬の変更は理解が難しい。
既往歴: 心不全 2型糖尿病 慢性腎不全
服薬情報: 朝昼夕で計7種類。インスリン自己注射は行っていない。直近で利尿剤の増量、糖尿病薬の減量変更あり。
環境: 多床室。ベッドサイドに簡易テーブルあり。薬は薬カートで管理。
性格: 不安が強く「ちゃんと飲めていますか?」とよく確認する。
生活歴: 商店を営んでいた。細かい数字には敏感だったが、現在は計算は困難。
現在の生活リズム: 6時起床、食事は食堂。服薬は食後に職員介助。
直近の変化: 1週間以内に2回外来受診。処方変更が複数回発生。担当職員が一部入れ替わった。
■状況
1週間の間に、外来受診が2回あった。
1回目で利尿剤が増量。
3日後、血糖値の変動があり、糖尿病薬が減量となった。
処方変更はその都度記録され、看護師から口頭で申し送りも行われた。
しかし、変更内容は「前回からの差分」と説明されていた。
昼食後の服薬介助。
担当職員Dは異動してきて2週間目。
記録は確認していたが、直近1週間で複数回変更があったことまでは把握していなかった。
薬カートには最新処方の薬がセットされていたが、
前日夜勤者がセットした際、昼分のみ旧処方の一包が混在していた。
利用者は服用の際「今日は錠剤が多い気がする」と話したが、
職員Dは「最近変わっていますからね」と返答し、そのまま介助を続けた。
その後、夕方に低血糖症状が出現。
血糖測定で著しい低値を確認。
確認の結果、旧処方の糖尿病薬が昼に投与されていたことが判明した。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 差分での申し送りは、職員の理解に影響しそうですか?
- 利用者の「今日は多い気がする」という発言は、どう扱われましたか?
- 記録を確認したが把握しきれていなかった原因は、どんなことが考えられますか?
- 今回の誤薬を、事前に予測することはできそうですか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 服薬前の内容確認が不十分だった。
- 申し送りが十分に伝わっていなかった。
■背景にある原因
- 短期間で複数回の処方変更があり、全体像の把握が難しくなっていた。
- 薬のセット工程においてダブルチェックや確認手順が十分でなかった。
- 申し送りが「差分」で行われており、現在の最新処方の全体像が共有されにくかった。
■対策
- 処方変更時は「変更点」だけでなく「現在の最終処方一覧」を一覧形式で記録・共有し、誰でも一目で確認できるようにする。
- 薬のセット時は、セット者と別職員によるダブルチェックを行い、日付・時間帯ごとに内容確認を行う。
- 服薬介助前に、薬カートの内容と最新処方表を照合する手順を明確化し、特に変更後数日は重点的に実施する。
見方のポイント
背景には情報の扱い方や業務の流れが影響していた可能性があります。
特に、変更が重なった際に「現在の正しい状態」が見えにくくなる点は一つの視点です。
また、利用者の気づきが結果的に重要なサインとなっていた可能性もあります。
一つの確認不足として終わらせず、情報共有や確認の仕組み全体で捉えることが重要になる場合もあります。



