▲手が回らなかった時間帯|(転倒・転落/30分)

■利用者プロフィール

89歳 女性 要介護度:4 施設入所中

ADL:歩行は不可。移動は車椅子を使用し全介助。立位は短時間であれば介助にて可能。
リハパンとパッド使用。トイレの訴えはあるものの、排泄感覚は曖昧で既に失禁していることが多い。
認知機能:中等度の認知症あり。状況理解に時間がかかることがあり、指示と動作のタイミングが合わないことがある。
福祉用具:車椅子 
性格:遠慮がちな性格で、我慢する傾向が強い。職員が忙しそうにしていると、声をかけるのをためらう様子が見られる。
生活歴:専業主婦として家族中心の生活を送ってきた。家族からは「外聞を気にして我慢してしまう人」と言われている。
既往歴:大腿骨骨折既往 骨粗鬆症
服薬情報:骨粗鬆症治療薬 睡眠導入剤
環境:日中は食堂で過ごすことが多い。排泄はトイレを使用。
現在の生活リズム:2時間おきにトイレ誘導を行っている。日中は1~2回ほど本人の訴えで誘導することもある。
直近の変化:ここ数日、トイレの訴えがやや増えており、排尿回数が増えている。排泄チェック表に時間と一日の回数は記録されていたが、特別な申し送りはなかった。
排便は3日前に「普通便 中等量 1回」と記録されており、普段と変わりないという認識であった。

■状況

午後の時間帯。
食堂では複数の利用者対応が重なり、職員はそれぞれの介助に追われていた。

Aさんがそっと手を上げて職員を呼ぼうとしたことに気が付いたが、すぐには対応できず
「少し待ってください」と声をかけて他の対応を優先していた。

その後、Aさんは周囲の様子を見て、自分で車椅子から立ち上がろうとした。

近くにいた職員が気づき声をかけたが間に合わず、バランスを崩して転倒した。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • Aさんの行動は、どのような背景から起きたと考えられますか?
  • 排泄間隔の変化は、申し送り事項として必要なものだと思いますか?
  • 職員の声かけの内容は、影響していそうですか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。

事故の原因や対策に明確な正解はなく、いずれも仮説として捉える必要があります。
実際の結果を見ながら検証していくものであり、さまざまな視点から考えることに意味があります。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

■直接要因

  • 見守りが間に合わなかった。
  • 立ち上がり動作への介助が行われなかった。

■背景要因

  • 排尿回数の増加が共有されておらず、Aさんの訴えの緊急性が認識されにくかった。
  • 遠慮がちな性格により、強い訴えが表出されにくかった。
  • 「少し待ってください」と伝えた後のフォローがされていなかった。

■対策

  • 前日の排泄回数を常に申し送り事項とする。
  • 遠慮がちな性格から、小さな訴えに見えても本人にとっては緊急性が高い訴えであると考え、優先的に対応する。
  • 待ってもらうときには、「なぜ」「どれくらい」待つのかを具体的に伝える。
  • 持ってもらっているときには、本人をこまめに確認する。

見方のポイント

見守り不足と整理することもできますが、
待つことが前提となる場面で、その間の安全がどのように担保されていたかを考える必要があります。
また、訴えの背景にある排泄状況や本人の性格が、行動にどのように影響したかも見ていく視点が重要です。

排泄回数の変化を共有するために「排泄回数をグラフ化する」ことも考えられますが、
グラフ化という業務が、職員の負担に繋がる可能性があります。

そのため「回数を申し送る」程度にとどめています。

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