見守りのつもりだった|(入浴/20分)
本記事の趣旨
この記事では、思い込みによる待機判断の齟齬と自立志向が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
本ページはブラウザの印刷機能を利用した際に、
ワークシート部分が最適にレイアウトされるよう調整しています。
そのまま印刷して現場の研修資料としてお使いいただけます。
印刷ショートカットキー
Windows:Ctrl + P
Mac:Command + P
【事例検討】見守りのつもりだった(入浴)
■利用者プロフィール
87歳 女性 要介護度:2 施設入所中
ADL: 歩行は自立。衣服の着脱も概ね自分で行えるが、浴室では滑りやすいため見守りが必要とされている。
認知機能: 軽度の物忘れあり。日によって判断力にばらつきが見られる。
福祉用具: 浴室内に手すりあり。シャワーチェアを使用。
性格: 自分のことは自分でやろうとする傾向が強く、職員に頼ることをあまり好まない。「これくらい大丈夫」と判断して行動することがある。
生活歴: 長年一人暮らしをしており、身の回りのことはすべて自分で行っていた。
現在の生活リズム: 週3回の入浴日を楽しみにしている。
■状況
午後の入浴時間。
この日は利用者が多く、職員はいつもより忙しい状況だった。
Aさんは脱衣所で衣服を脱ぎ、職員の声かけを待ってから浴室に入る流れになっている。
職員BはAさんが準備をしているのを確認すると「いつも通り待っていてくれるだろう」と思い、浴室の準備のためその場を離れた。
数分後、浴室内で物音がした。
確認すると、Aさんが浴室入口付近で尻もちをついていた。
Aさんは「もう入っていいと思った」と話した。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 浴室での「見守り」とは、どの程度を想定していたでしょうか?
- Aさんの性格は、職員の判断に影響したと思いますか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 職員の声かけ前に浴室へ入ろうとした。
■背景にある原因
- 軽度認知機能のばらつきにより、その時の判断が不安定だった可能性がある。
- 入浴手順(待機→声かけ)のルールが明確に共有・固定化されていなかった。
- 職員の忙しさにより、待機中の見守りが途切れていた。
- 脱衣所と浴室の境界が曖昧で、入室の判断が利用者任せになっていた。
■対策
- 浴室入口に視覚的な目印(待機位置や合図)を設け、判断を補助する。
- 待機中の利用者が視界に入る位置で作業を行う、または短時間でも再確認を行う。
- 入浴介助の流れを見直し、待機時間が長くならないよう調整する。
見方のポイント
この事例は「待てなかったこと」だけでなく、
「待つための条件が整っていたか」が重要な視点になります。
本人の性格や認知機能の特性により、状況に応じた自己判断が入りやすかった可能性があります。
また、職員側の想定(待っているだろう)と本人の認識にズレがあったとも考えられます。
対策としては、個人の注意に任せるのではなく、「誰でも同じ判断になる仕組み」を環境や手順で整えることが重要と考えられます。




