座れると思った場所|(転倒・転落/30分)

本記事の趣旨

この記事では、視野障害による環境認識の困難さと帰宅願望による離席行動の頻発、
さらに見守りの分散が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。

事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。

現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。

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【事例検討】座れると思った場所(転倒・転落)

■利用者プロフィール

92歳 女性 要介護度:4 施設入所中 重度の視野狭窄

ADL:身体機能自体は比較的保たれているが、視野狭窄によりすべての動作に介助を要する。
支え無しでの歩行も可能だが、障害物等の回避ができない。
認知機能:アルツハイマー型認知症。会話の理解は可能。場所、日時の見当識障害あり。
性格:他利用者とは会話が噛み合わずほとんど交流しないが、職員との会話には穏やかに返答する。
頑固な面もあり、一度決めたことは中々曲げない。
生活歴:専業主婦。子育てが落ち着いてからは畑で野菜を育てていた。長年息子夫婦と同居していたが、認知症症状が現れだしてから嫁との関係が悪化した。
本人は「嫁さんはよくやってくれているけど、まだまだだわ」とよく話している。
既往歴:緑内障 転倒歴多数あり(骨折なし)
服薬情報:抗精神病薬(貼付剤、昼食後貼り替え)
環境:リビングの自席は中央あたり。周辺は広いスペースがあり障害物等も置かれていない。
事故当時の職員配置は3人。食事作り、入浴介助、フロア担当と分かれていた。
現在の生活リズム:日中はリビングで過ごす。時間を問わず毎日強い帰宅願望があり、立ち上がりが頻回になる。職員の声かけに納得しても、すぐに「帰ろうか」と立ち上がる。

■状況

昼食後の13時頃から帰宅願望が見られるようになり、立ち上がりが頻回になる。
職員は、その都度声かけやトイレ介助、お茶を提供したりしていたが帰宅願望は続いていた。

落ち着かないまま15時頃、
フロア担当の職員は他利用者のトイレの見守りとフロアの見守りを同時に行っていた。

すると、Aさんが立ち上がりテーブル伝いに少し横に移動しているところを目撃。
「Aさん、危ないよ」と声をかけ近づいたが、Aさんはそのまま椅子の無いところに座ろうとして尻もちをついてしまった。

✍原因を考えてみましょう

✍どのような対策が考えられるか

進行役メモ ※声かけの例

  • 「危ないよ」という声かけは、事故に影響していると思いますか?
  • 職員間でのコミュニケーションは取れていたでしょうか?
  • 毎日の帰宅願望の原因は、どんなことが考えられますか?
  • 帰宅願望への対応で気になる点はありますか?

▼この事例の整理例

こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。

また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。

■表面的な原因

  • 見守りの同時対応による注意の分散
  • 利用者の立ち上がり・移動に対する即時介入の遅れ

■背景にある原因

  • 帰宅願望による頻回な立ち上がりが続き、行動の予測と対応が難しくなっていた。
  • フロア担当が複数の見守りを同時に担う業務配置となっていた。
  • 「声かけで一時的に落ち着く」という経験が、対応の中心になっていた可能性がある。

■対策

  • 立ち上がりが増えるタイミングを踏まえた事前の関わり(活動や個別対応)の検討する。
  • 同時見守りが発生しにくい業務分担や応援体制の調整。
  • フロア担当者がフロアを離れる際には他職員に伝える。

見方のポイント

今回の場面は「見守り中の転倒」と捉えることもできますが、
なぜその状況が重なったのかを見る視点も重要と考えられます。

帰宅願望による行動の持続、視覚障害と認知症の組み合わせ、
そして同時対応が求められる業務状況など、複数の要素が影響していた可能性があります。

一つの要因に絞るのではなく「重なり」に目を向けることで、
別の関わり方や環境調整のヒントが見えてくることもあります。

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