声はかけたつもりでした|(転倒・転落/20分)
本記事の趣旨
この記事では、待機困難と自立志向による先行動作が重なり転倒が発生した事例を取り上げます。
事故の原因を表面的なもので終わらせるのではなく、
背景にある環境や仕組み、心理など多角的な視点から「なぜ起きたのか」を深堀りする構成になっています。
現場での研修や、スタッフの「気づく力」を養うための素材として、
ぜひチームで多様な仮説を出し合ってみてください。
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【事例検討】声はかけたつもりでした(転倒・転落)
■利用者プロフィール
88歳 男性 要介護度:3 施設入所中
ADL: 室内は歩行器使用で見守り。立ち上がりは不安定。
認知機能: 軽度認知症。理解力は保たれているが、焦ると判断が早まる傾向あり。
既往歴: 大腿骨骨折(2年前)高血圧
服薬情報: 朝食後に利尿剤あり
福祉用具: 歩行器
性格: 自立心が強く「自分でできる」と思っている。人に頼ることを遠慮する。
生活歴: 元会社経営者。現役時代は「人を待たせない」が信条で、常に時間を意識して行動していた。部下に頼るより自分で動くタイプだった。
現在の生活リズム: 日中は他利用者とともにリビングで過ごす。レクや手伝いなど積極的に参加する。
■状況
15時頃、Aさんより「トイレに行きたいんだけど」と言われたが、同じタイミングで他利用者の介助が重なり、
職員は少し離れたところから「○○さん、すぐ行きますから待っていてくださいね」と声をかけ、目を離した。
他利用者の介助が終わりAさんのもとへ行くと、自分で歩行器を掴み立ち上がろうとしていた。
職員は「危ないよ!」と大きな声で注意をしたが、歩行器がわずかに傾き、体勢を崩し転倒した。
✍原因を考えてみましょう
✍どのような対策が考えられるか
進行役メモ ※声かけの例
- 離れたところからの声かけと、目の前での声かけに違いはありますか?
- もし別の言い方だったら、行動は変わったでしょうか?
▼この事例の整理例
こちらの整理例はあくまでも一例であり、正解不正解を示すものではありません。
ここにない考え方も含め、どれも一つの答えになり得ます。
また、個別の状況によって適切な対応は異なります。
実際の現場では施設管理者や医師の指示に従ってください。
■表面的な原因
- 待機中に自ら立ち上がろうとした。
- 声かけのタイミングや内容により動作が乱れた。
■背景にある原因
- 「待たせない・待たない」という生活歴から、待機行動が苦手であった可能性。
- 焦りやすい傾向により、判断や動作が早まった可能性がある。
- 利尿剤の影響で尿意が強く、緊急性が高まっていたのかもしれない。
- 職員側で「待機中のリスク」について具体的な共有や対応手順が整理されていなかった。
■対策
- 「待っていてください」に加え、待機中の具体的な行動(座位保持など)と、なぜ待つのかを明確に伝える。
- 待機中も視界に入る位置での見守りや、短時間でも定期的な再声かけを行う。
- 必要に応じて、トイレのタイミングを事前に調整するなど予防的な関わりを検討する。
- トイレ誘導の優先度を見直し、利尿剤使用者などは早めの対応を意識する。
見方のポイント
この事例は「待てなかったこと」や「無理に立ち上がったこと」に注目されがちですが、
その背景には本人の生活歴や価値観、身体的な要因が影響している可能性があります。
特に、時間を意識して行動してきた習慣や、尿意の切迫感が重なることで、「待つ」という選択が取りにくくなっていたとも考えられます。
また、「すぐ行きます」という声かけだけでは行動抑制としては不十分な場合もあります。
対策としては、個別の特性に応じて「待てる環境をつくる」視点や、待機時間そのものを短くする工夫が重要になると考えられます。





